名付けて「卵(らん)ボックス」!

・・・ただの箱です(笑)



では、ゲノムボックスとこの箱をつかって減数分裂のしくみを、直感的に理解してみましょう。



減数分裂とは、卵(らん)や精子などの生殖細胞を製造するための、いわば「特別な細胞分裂」です。

ヒトの場合、女性であれば卵を、男性であれば精子をつくるときに減数分裂がおこなわれます。

ここでは、女性を例に考えてみたいと思います。

(精子ボックスをつくって、男性を例に考えてもOK)



ここにあるのは、ある女性の染色体(遺伝子)です↓



赤は、女性が母親から受け継いだ遺伝子。

青は、女性が父親から受け継いだ遺伝子です。



母親は自身の遺伝子を卵に詰め込んで、子孫に伝えます。

遺伝子を卵に詰め込む際に、もっとも大切なことは

46本ある染色体を半分の23本に減らすということでした。

それによって、卵(23本)と精子(23本)が合体したとき、再び46本に戻ることができます。



では、46冊の染色体から適当に23冊を選んで、卵ボックスに詰めてみましょう。



適当に詰めるといっても、1巻〜23巻(X巻)までが1冊ずつなくてはなりません。

1巻〜23巻のセット(ゲノム)がそろって初めて、ヒトが完成するからです。





じゃん!


卵が完成しました。


赤本は、この卵から生まれてくる子供からみれば「おばあちゃんの遺伝子」、

青本は「おじいちゃんの遺伝子」ということになります。

赤本と青本の組み合わせが変われば、生まれてくる子供も当然変わってくるわけです。



ほかにもいろいろな組み合わせが考えられます↓

     


赤本と青本の組み合わせ、いったい何通りくらいあると思いますか?


ちょっと計算してみますと・・・

1巻〜23巻までそれぞれ、赤青の2通りあるので

2×2×2×2×2×・・・と2を23回かけたものが、赤本と青本の組み合わせになります。


その数、な、なんと8388608通り!



さらに、精子も同様の組み合わせが考えられるので、

受精によって限りなく多様な子がつくられることになります。

もしも、人が一生の間に何十人、何百人と子どもを生んだとしても、

同じ遺伝子をもった子どもが生まれる確率は、一卵性双生児を除けばほとんどゼロです。


減数分裂は、単に染色体(遺伝子)を半減させるだけでなく、

卵一つひとつ、精子一つひとつに違った遺伝子を与える驚くべきしくみを備えているのですね。





減数分裂の過程はなかなか複雑で、そこでいったい何が起こっているのか

ちょっと見ただけではわからないものです。

そこで、減数分裂の本質的なところを、視覚的に、直感的に理解できるよう

以上のような工夫をしてみました。


生徒の反応は上々で、興味を持ってくれたので良かったと思います。

細かな知識は忘れても、生物のこういう本質的なことはずっと覚えていてほしいですね。



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