では、この本を使って細胞分裂のしくみを説明してみましょう。
まず体細胞分裂です。
黒板の白い丸は細胞をあらわしています。
いま、1つの細胞のなかに4冊の生命の設計図(染色体)があるとします。
この細胞が2つに分裂すると、4冊の本はどうなるでしょうか?
写真右は斜めから見たようす。本は複製された状態になっています。
(複製された状態では、セットで「1冊」と数えます。この場合は全部で8冊ではなく4冊です。)
分裂すると…
複製されていた本がばらばらになって、4冊ずつに分かれました。
1つの細胞に含まれる本の数は分裂前が4冊、分裂後も4冊。
つまり1つの細胞に含まれる染色体の数は分裂の前後で変化しません。
(染色体の本数は生物によって決まっているので、分裂の前後で変化してしまったら大変ですね。)
細胞が分裂すると遺伝情報まで半分になってしまいそうですが、
実際には、分裂する前に遺伝情報を複製(コピー)しておいて、
それを2つに分けているのです。
このように細胞は、複製→分裂→複製→分裂をくりかえして増殖します。
ちなみに、わたしたちヒトのからだは、およそ60兆個の細胞からできているそうですが、
はじまりはたったひとつの受精卵です。
両親から受け継いだ「たったひとつの設計図」。それを正確にコピーして分裂して、またコピーして…
そんな気の遠くなるような過程の末に、今の私たちがあるんですね。
では次に減数分裂について説明しましょう。
分裂前は体細胞分裂と同じく、染色体が複製された状態になっています。
第一分裂がおわりました。
1つの細胞に含まれる本の数は分裂前が4冊、分裂後が2冊。
染色体数が半減しています。
先ほど「1つの細胞に含まれる染色体の数は分裂の前後で変化しない」といいましたが、
減数分裂は例外です。
減数分裂とは卵や精子などの生殖細胞をつくるための細胞分裂です。
ヒトの場合、もしも生殖細胞の染色体数が46本のままだったら、
卵と精子が受精したとき46+46で92本になってしまいます。
それではマズイので、生殖のために染色体数を半減させた特別な細胞をつくるのですね。
第二分裂です。
複製された本がばらばらになりました。
これで減数分裂はおしまいです。
最後に本の種類に注目してください。
「1巻が赤、2巻が青」と「1巻が青、2巻が赤」の2種類あるのがわかります。
(授業では、ここで赤赤と青青のパターンも示します。)
つまり何を言いたいかというと、
減数分裂をするといろいろな種類の遺伝子をもった卵や精子ができる。
ということです。
減数分裂は、
@染色体数を半減させる
A遺伝的な多様性を生み出す
という2つの仕組みを備えているのですね。
以上、ゲノムの話から細胞分裂の仕組みまで幅広く活用できる教材として「ゲノムボックス」を紹介しました。
染色体を「本」に置き換えることによって、何よりもとっつきやすくなりますし、
細胞分裂では、遺伝情報がどのように分配されるのかイメージしやすくなると思います。
実際に授業でも、その役目を十分に果たしてくれました。
ただ、46冊作るのは本当にしんどいので、あまり勧められません(汗)。
もっとお手軽な良い教材はないものでしょうか…。
追記(2007/03)
減数分裂のしくみを直感的に理解できるように、ちょっとした工夫をしてみました。
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